「米国でもLIC精液需要」
NZと言えば、いまさら申し上げるまでもなく、酪農立国で有名ですが、工業先進国のなかでこれほど酪農の比重が高い国はないかと思います。日本の自動車産業のように、その生産物の多くが輸出に回されるため、価格は、国際市場価格という所与で決定され、利益を出すために効率的生産を行い、生産コストを如何に抑えるかが産業の大きな目標でした。たどり着いたのが、温暖な気候を比較的優位ととらえ、放牧による牧草地の有効利用で土地生産性を最大にすることでした。
時代が変わり、穀物の高騰から放牧による牧草の利用が見直されており、米国でもNZ型の放牧を推奨する乳業団体が出現し、NZの精液の需要が急速に増えています。LICはアメリカに支店を設け、より本格的販売を目指しています。
「NZのLIC牛の特徴」
1)「小柄な牛?」
牛が小さいか、大きいかはNZの牛の議論で、真っ先に出る話題です。LICの何人かの専門家に聞いたことがあります。小さい牛を選ぶことは一切ない、ただ、体重あたりの能力を評価する方法を取るため、海外と比べると小ぶりな牛が多いのは事実とのことでした。体重が選抜の基準に正式に導入されたのは、比較的最近のことですが、飼料から乳生産物(NZでは、乳蛋白、脂肪)に換える変換率が体重と負の相関があるという事実に基づき決定されたものです。従って、放牧を中心に、牧草で牛乳を生産したいと願う人にとっては、お勧めです。
しかし、ご存知のように、牛の体の大きさは絶対的なものでなく、育成段階での栄養供給と関係しています。従って、国内の牛と同じような飼育をすれは、間違いなくNZにいる牛より大きくなります。
2)「全てNZの遺伝子?」
NZの乳牛は、世界的に見ると年中放牧出来るという恵まれた環境下で飼育されているので、改良もNZの中で閉じた形で改良が進められていると想像されている方が意外に多いのですが、これは事実とは異なります。世界中から良いと想像される種は、試用しています。したがって、NZより輸入する種雄牛の祖先に世界的に有名な牛も見られます。しかし、それらはNZの飼育環境下で再度選抜されたものです。
LICは血統のインジケータで、NZのオリジナル遺伝子が何パーセント含まれているかを示しています。目安になるのでご利用いただければと思います。
近交係数も表示されていますが、極めて低く、先ず、どの牛との交配でも問題がないと考えています。
LICでは、ジェノミックスと言う最新技術を駆使して、信頼性の向上に役立てています。あくまでも、選抜等は従来法で行い、遺伝伝達の信頼性をそれらによって強化しています。これはNZの授精市場の78%のシェアをもつLICだからこそ可能な技術の一つです。
3)「穏やかな気質」
2010年現在のNZの酪農の一軒当りの平均飼養頭数は366頭、世界で抜きん出た規模を誇りますが、作業は2〜3.5人程度で行われます。少人数で多頭数の牛を搾乳が出来るように、「気立て」の良い牛であることが重要で、この点に比重をかけて改良が進められてきました。
しかし、活力に溢れている必要があります。ニュージーランドでは季節分娩で、春先一斉に生まれる子牛達は、牧草地の上で哺乳(沢山の乳首のある器具で)されます。これによってガッツのある牛が残るとされており、家畜改良のデータには現われませんが、穏やかでも活力はある牛です。
4)「優れた草から乳への変換効率」
NZの牛の特徴は、草を牛乳(MS:タンパク、脂肪)に替える効率が高いことです。統計データから、酪農家一軒あたりの平均出荷乳量は140万kgで、農場の平均の広さは131ヘクタールですので、1ヘクタール当り10687kgの牛乳を生産します。飼料の85%が放牧による牧草採食です。残りの多くが乾草、サイレージ、コーンサイレージですので、効率の良さはご理解いただけると思います。なお、この牛乳の成分は乳脂肪が4.7%、蛋白3.7%を含んでいます。(NZ Dairy Statistics 2008/2009)
5)「繁殖能力」
NZの低コストは、季節分娩なしには語ることが出来ません。なぜなら、サイレージや、乾草などの貯蔵飼料にすると処理過程が入り、コストアップになるためです。
これらの貯蔵飼料を最小限にする方法は、草の伸びに牛の飼料要求時期を合わせます。具体的には泌乳のピークを草の伸びの良い春に合わせます。当然、毎年継続させるため、分娩間隔は一年でなければなりません。国際的なICARのデータ(2006)によると、国全体の分娩間隔は367日です。分娩後、発情が速やかに戻り、また受胎するように改良されています。
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